side-ギィ


……本当はさ、起きていたんだよね、あの時……。動けなかったけどさ……。
ビックリしたよ、リグとミグが交尾してるんだもん。
でも、ミヤに言う気にはなれなかったんだよね。
だって、ミグの気持ちってあたしと一緒だったんだもん。
リグの事が好き、でもミヤがいる。
それに私はコウモリ……。ペットとして傍にいることができるだけで精一杯……。
それでもあたしは、ミグのように身を引くなんてできないと思う……。叶わないとわかっていても傍にいたいんだもん……。
「ギィ、どうしたん?」
リグが肩に乗っているあたしの方を見て心配そうに言う。
「あ、ううん、なんでもないよ、ちょっと考え事をしてただけ」
「なら、いいけど……」
リグってば、時々鋭い……。普段はちょっと頼りない感じなのにね。
リグと同じ獣に生まれれば良かったな〜……。でもまてよ?それだとこんな風に肩に乗れないし……。
「ギィ、ミヤとキノコや木の実と薪を取りに行ってくれないかな?今日はここでキャンプするから。ぼくはここでテントを張ってるね」
「おっけ、わかったよっ。行こっ、ミヤ」
「しょうがないなぁ……」
う、ミヤってば本当にしぶしぶ……。夜になれば私達肉食こうもりを始めとして強暴な動物が出るかもしれないから、早くしないといけないのに……。
そういえば、あたしってばいつのまにか昼型になってる……。へ〜んなコウモリ。
「ね、ミヤ?」
「な〜に〜?」
な、投げやりな……いちおー、薪拾いはしてるみたいだけど。
「ミヤって、幸せだよね?」
「何を突然……幸せに決まってるじゃない」
ミヤが幸せならリグは幸せ。リグが幸せならあたしも幸せ。だから、ミヤが幸せならあたしも幸せなんだ。
「あたし、邪魔?」
「べっつに〜」
う〜ん、まじめに答えてくれない……。答えを聞くのはちょっと怖かったんだけど……。
「あ、あの木の実、美味しいんだって〜」
あたしはこれ以上深く聞けなくなって話を自分からそらした。
「い〜い〜、落とすよ〜、受け止めてね〜」
ぷつん、ぷつん、ぷつん……。
木の実をちぎって下に落とす。それをミヤが地面に落とさないように受け止める。
普通の肉食こうもりはこんな事はしないけど、これも結構楽しいんだな。
「そろそろ戻ろっか?」
「そうだね〜」
あたし達は結構深く来てしまった。そろそろ、危ない時間帯かもしれない……。
「ねぇ、さっきの話だけど、邪魔ってどう言う……」
「しっ!」
あたしは耳をすます。気配がする。何か危険な……。高く飛べ!本能がそう告げる。でも飛べない。ミヤがいるから……。
「何か……来るよ!走って!!逃げるよ!!」
あたしは飛んで、ミヤは走って逃げた。でも、間に合わなかった。
「ロープス!!こいつらヤバイよ、ミヤ!!」
こいつらは蔦のような、蛇のような生き物で集団で襲いかかってくる。そして体中の穴という穴から内部に侵入し内臓を食い尽くす。
こいつらにかかったらまるで剥製のようなきれいな死体で転がることになる。
「あたしが囮になる!だからミヤは逃げて!!」
こいつらにもあたしの毒は効く。焼け石に水かもしれないけど、戦って時間を稼ぐ!
「冗談でしょ?「友達」を見捨てて逃げるなんて私はできないよ」
そう言ってミヤは懐から包丁を取り出して構える。そんなの携帯してたんだミヤって……。
でも「友達」って……。嬉しい……。けどっ!!
「もう遅い!来るよっ!ミヤっ!!」
あたしは最初に飛びかかって来たロープスをかわすとすれ違いざまに噛みついた。最初はのたうっていたけど、すぐに動きが鈍くなった。
「ミヤっ!そっちは大丈……」
ミヤはデタラメに包丁を振り回していた。これじゃあ、やられるのは時間の問題……のはずなんだけど、包丁を振り下ろした場所に必ず飛びかかったロープスがいる。凄い幸運……。
「きりが無いわね……」
ミヤが包丁を振り回しながらつぶやく。
「火、よ。火があればいいわ。でも、マッチの火程度じゃダメよ!!」
ミヤが火種を持っていたとしても、燃やすものはリュックに入った薪だけ……。燃やすにしても着火剤になるものが無い。気休めにしかならない言葉……。いずれやられる……。
「火ね?わかった!」
ミヤはポケットから瓶とマッチを取り出すとロープスの死骸に瓶の液体をぶちまけ、マッチを擦って火を投げ入れた。
ごうっ!!
ロープスの死骸は一気に燃え上がり、生き残っていたロープスは慌てて退散していった。
「ちぇっ、このお酒、高かったのに……もったいない……」
お、お酒、ですか……。でもこんなに良く燃えるなんてよっぽど強い……。でも、ミヤってばザルだから……。
「と、とりあえず、薪で松明作って、早く戻ろ?火があればまず大丈夫だから……」
「そうね……」
ばらばらばら……。
松明が作れない……。ミヤってばとっても不器用……。そーいえば、テントを張ろうとして崩れて、埋まって、そのままミノムシ、って事もあったなぁ……。
「と、とにかく木を縛るだけでいいからね、早くいこっ」
「わ、わかってるわよっ」
あせればあせるほどうまくいかない……。ああ、まずっちゃったなぁ〜。
そしてしばらく悪戦苦闘した末、ロープにくくった木の束をつるす、きみょーな松明ができ上がった。ま、火さえ点けば何だっていいんだけどね。
「早くもどろっ、リグ、心配してるよ」
「そうだね……」
あたし達はリグの所まで飛んで帰った。
「おかえり、ミヤ、ギィ」
ずる、何も心配して無い……。
「遅くなってごめんねっ」
「ん〜、別にギィがついているから、大丈夫だろって……ミヤだけだったら心配だけど……」
え〜と、そんなに信頼されても困るんですけど……。嬉しいけど。
「キノコもお肉もいいのが見つからなくって……結局この木の実だけなんだけど……」
ミヤがリュックから赤く熟れた木の実を五つほど転がす。
「うん、ミュムの実か。これ、甘酸っぱくって美味しいよ。ジャムにするといいよね〜」
へ〜、そうなんだ、あたしは食べられないんだけど。
「じゃ、早く夕食にしよう」
ミヤとリグが寄り添うように座っている。本当にうらやましい夫婦だよね……。
「ギィ、どうしたの?そんなに離れて」
「あ、あはは、あたし、やっぱり火は苦手みたい……昼間だとそうでもないんだけど……」
嘘。本当は結構慣れてきてる。でも、今は二人を邪魔したくない。
私は二人から離れた場所でリグから貰ったお肉を食べている。本当にお似合いだよな〜、あの二人……。
ミヤがうらやましいな〜……。あたしもお似合いの彼氏ってできるのかな?やっぱり、コウモリだよね……。
「んっと、あたし、ちょっと出かけてくるね。お二人さん、ごゆっくり〜」
「ぎ、ギィ……ごゆっくりって……」
あたしは翼をはばたかせて空高く舞い上がった。ん〜、きっもちいい〜。あの二人、なんだかんだ言って毎日盛っているからね。邪魔するわけにもいかないし〜。
「おじょうさんっ、よかったら俺達と狩りに行かない?」
「ほぇ?」
声のした方を向くと、小さな肉食コウモリの群れがあった。たった七匹の群れだけど、全員オス……。
「ここしばらく狩なんてして無かったけど……いいよっ、行こうっ!」
「そうこなくっちゃ!」
「で?獲物は?」
「今から探すの!」
そりゃそーだ。
「あいつらなんかどうだ?」
見ると、それはリグとミヤ。
「わああああぁっ!ストップ、ストップぅ〜!」
「な、なんだよぉ……」
「あの人たちは私の仲間だから襲っちゃダメッ!」
「ちぇっ、でも、お前の仲間なら俺達にとっても仲間だ。あきらめるよ」
「ごめんね〜」
「いいって事よ」
結局、一晩中飛びまわったけど、今日は獲物は見つからなかった。
「そろそろ夜があけるし、解散だな」
「うん、またねっ」
みんないいコウモリ達だったけど、やっぱりときめかない……。やっぱりリグの方がいい……。
あたしはテントの所に戻ってきた。リグもミヤも寝ている。でも、ミヤはともかく、リグは少しでも音を立てると起きちゃうから、そっと、ね。
リグとミヤは結局今日も交尾していたみたい。昼間あれだけミグと交尾していたのに、タフだね、リグは。
リグの寝顔……。かわいいっ。あ、あれ?なんで涙なんか……。あたし、変だよぉ〜……。

「ギィ、寝不足?」
「うん……そうみたい……」
本当はあたしは夜動いて昼に寝る生き物だから、こっちの方が普通なんだけど……。
「リグ、ごめんね、ちょっと肩で寝させてね」
「いいよ、別に……」
ふふ、リグが暖かい……。信頼できるから……心を許せるからこういうことができるんだよね……。リグ……大好き……。
少しだけ、少しだけ眠らせてね……。

あたしは夢を見た。
あたしの昔の住処……。ルカ様の神殿……。
「ギィ、そなたはそれでいいのか?」
「ルカ様?何の事です?」
「そなたはリグの事を好いておるのだろう?」
「確かにあたしはリグの事が好きだよっ。でもそれでいいのかって?」
なぜか無機質で暗い空間……。言葉の全てが闇に吸い込まれていくような気がする。
「そなたはリグに好きになってもらいたくは無いのか?」
「もう十分、好きだって、愛情をくれているよ、リグは」
「もっと……肉体的にも、精神的にも好きになってもらいたくは無いのか?わらわならそれができる。わらわは月と森を司る者。わらわの可愛い娘よ……」
……違う。違う、違う、違う!
「あなたは、ルカ様じゃない!あなたはあたしの欲望!!消えて!消えて!!消えて!!!あたしは、あなたには屈しない!!」
「何故、そのようなことを言うの……」
悲しそうな瞳……。でも、あたしは騙されない!
「ルカ様はそんな事は言わない!あたしの願いはリグと話をすること!それ以上の願いなんかいらない!!」
ぐにゃり……。
偽ルカ様の像が崩れると闇に溶けていった……。神殿の壁がぼろぼろと崩れ、それも闇に飲み込まれていく……。
前も、後ろも、上も、下も、漆黒の闇。どっちを向いているのかも、もうわからない。
でも、不思議と不安は無い……。なにか、優しく暖かいものに守られている。それを体中で感じているから……。
沈んでいく、沈んでいく。ゆっくり、ゆっくりと沈んでいく……。これで……いいんだ……。

目が覚めると、もう夕方。
確か、あたしが眠ったのって昼前だったから……リグってばあたしをずっと肩に乗っけていたの!?
「ご、ごめん……起こしてくれれば良かったのに……肩、大丈夫?」
「大丈夫だよ、ギィは軽いしね」
「私は重いって事?」
「ぎ、ギィと比べないでよぉ〜……」
あはははは、やっぱりいいな〜、この二人。何であんな夢見ちゃったんだろう?
「で、きょーうはここでキャンプ?」
「ん、そうだよ。起きたばっかで悪いけど、ミヤと薪拾いにいってくれる?」
「ま〜かせてっ!ミヤ、行こうっ!」
「はい、はい……」
ミヤって……薪拾いそんなに嫌なんですか?

「ギィ、これって食べられる?」
「それ……?うん、大丈夫だよ……」
「なんか元気がないなぁ〜、まだ寝たり無い?」
「ううん、そうじゃない……」
あたしはさっきの夢を思い出していた。
−そなたはそれでいいのか?−
いいに決まっている……。あたしにリグとミヤの幸せを壊す権利なんか無い。リグの幸せがあたしの幸せなんだから……。
「ギィ!」
はっとしてミヤを見る。
「帰り道、大丈夫?私、覚えてないよ?」
「大丈夫、覚えているよ」
こんな事でも、あたしは頼られてる。それで十分じゃないの。これ以上何を望むと言うの?
「さ、帰ろっ!私、お腹空いちゃった」
「うんっ!!」
これでいいの。迷っちゃダメ!
「!?ちょっと待って……」
「何?また何か来たの?」
「違う……けど……」
白い……石?ミヤの幸運の指輪と同じ石?それもかなりの大きさ……。
「ねぇ、ミヤ、あの白い石……その指輪と同じ石だよね?」
「指輪と同じ白い石?そんなもの、無いけど?」
「ほら、あそこ……」
「無いよぉ〜……」
ミヤには、見えないの?子供の獣くらいの大きさがあるのに?というより、女の獣の形をしているよね?
「これだよ、あたしが今触っている奴」
「え?そこには何も無いけど?」
嘘……。本当にミヤには見えていない……。
カッ!!
一瞬その白い石が強く輝いたかと思うと砕けて欠片の一部があたしの胸に命中した。
「うぅっ……。あれ?今、石が砕け……」
痛くない。それどころかあれだけ派手に砕けた石の欠片すらない。
「寝不足だね、寝ぼけてるんだよ……」
「そうかも……ね……」
う〜ん、何だか納得がいかないけど、忘れることにしよう。

「ごちそうさま……」
「あれ、ギィ、いつもより少なくない?」
「う〜ん、何だかお腹が空かないの……別に病気とかって訳じゃないと思うんだけど……」
あたしは首を傾げた。最近毎日、それも三食食べているせいかな?あたしは毎日食べられるなんて事、今までは無かったんだもの……。
「多分、食べ過ぎ、ね……今までは一日に三回なんて食べなかったもの」
「そっか、じゃあ、ギィの食事は減らした方がいいのかな?」
「う〜ん、どうだろ?とりあえずちょっと様子を見るよ……じゃ、あたしは少し散歩してくるね」
あたしは翼を羽ばたかせ、近くにある切立った丘のような所に行った。
ミヤとリグって、毎日食べた後に交尾してるんだよね……。今日もやってるんだろうな〜……。
んっ……なんだか切なくなってきちゃったよぉ〜……。
あたしは空を見上げる。
きれぇな星空〜……。あ、今日は満月なんだ……。
どくんっ!
「あっ、胸が……熱い……?」
月の光が……熱い!?胸が……体中が痛い……。なんで?こんな事って……嘘でしょ?あたし、死ぬの?そんなのって嫌だよぉ……。リグぅ……たすけてよぉ……。
そのうちに目の前が月の光で真っ白になって、頭の中も真っ白になって……ああ、私は死んじゃったんだって……そう思った。
でもゆっくりと、視界が開けていく……。目に映るのはさっきと変わらない満天の星空。
「あたし、生きてる……」
声に出して言ってみる。生きてる。あたし生きてるよ!!良かった……。
あたしはゆっくりと立ち上がった。
立ち上がった!?
「え!?ちょっと、何!?これ!?」
足が……これって、獣の足……なんで!?
「え?これって……手?なんで?獣になっちゃったの?」
ばさっ、ばさっ……。
翼は、ある……。完全に獣になったんじゃなくって、獣の姿に変形した、って事なんだろうか……?
……空、飛べるかなぁ……。
ばさっ、ばさっ、ばさっ、ばさっ……。
うん、飛べる飛べる、快適っ!
でも、何でこんな事になっちゃったのかなぁ……。とりあえずリグの所に戻ろうっと。
ばさっ、ばさっ、ばさっ……。
翼も大きくなってるから、結構音が大きい。リグを起さないように、ちょっと離れた所に降りて歩いていこう、っと。
んっと、歩くのって、何だか変な感じ……。
ずべっ。
きゃんっ!!いたぁ〜い……。こけちゃったよぉ〜……。
「えっと、君、誰?大丈夫?」
あ、あははは、リグ、起こしちゃった……。
「くすっ、だ〜れだ?」
「え?え?え?」
わかるわけ、ないよねぇ……。ちょっとからかっちゃおっと。
「ヒント、あたしは最近ずっと、リグのそばにいました」
「え、ぼくの名前……そばにいたって?」
くすくす、わからない、わからない。
「ヒント2、これならわかる?」
あたしは翼をひろげて見せる。コウモリの、黒い羽。
「もしかして……でも……まさか……ギィ!?」
「ぴんぽーん、正解〜」
あたしはリグに飛びついた。
「わっ、ととと……」
「あ、ごめん……」
いつもと体の大きさが違うんだった、失敗、失敗。
「あたしにも良くわからないんだけど、なぜかこんな風になっちゃって……。どうにかならないかなぁ……」
「え、えっと……」
さっきからリグはちらちらと他所を見ている。
「こら!相談してるんだから、こっち向いてよ!」
ぐいっと、リグの顔をこっちに向ける。あれ?何かリグの顔、赤い?
「どうしたの?顔が赤いけど……」
「う……。だって、ギィってば……裸なんだもん……」
えっと??う〜ん……。
「リグぅ〜、いつもあたしの裸見てるくせにぃ〜」
「あぅ、それは……そうなんだけど……」
う〜ん、でもこれじゃ、話にならないなぁ〜……。
「ね、リグ、ミヤがいらないって言ってた服があったよね?それ、ちょうだいっ!」
「あ、う、うん、いいと……思うよ……」
この間、背中の部分を枝に引っ掛けて破っちゃった服があるんだよね。その穴をもう少し広げて、翼を出す穴にしてあたしが使っちゃお。
「あ、後、はさみも持ってきてね〜」
「これ、だよね」
「うん、それそれ〜、後は背中の穴をひろげて……」
「あ、ぼくがやるよ、任せて」
大体何がしたいのかわかったのか、リグは器用にはさみを使う。こーゆーのも、ミヤよりリグの方がうまいんだよね。
「できたよ」
「ありがとっ、リグ」
んしょ、んしょ……。う〜ん、やっぱり何か変な感じがする……。胸のところとかキツイし、そのくせ、腰の所は何だかぶかぶかだし……。服ってこう言うものなのかな?
「でね、それでだけど……あたし、どうしたらいいのかなって……」
「どうしたらって……ぼくにはわからないよ……」
「こんな姿でも、リグについていっていい?って事」
「それはいいに決まっているよ、ミヤにはぼくから言っておくから……」
「ありがとう……」
あたしはほっとした。そして、嬉しかった……。
「でもどうしてそんな事に……」
あたしはあたしの気持ちがリグにばれてしまうけれど、夢の事、石の事、そしてさっきのことを包み隠さずにリグに話した。
「なるほど、ね……確かに妙な話だね……」
「ね、気持ち悪くないの?」
「何が?」
「あたしがリグの事好き、って言うの……」
「女の獣に好きって言われて、悪い気はしないよ」
「あたしは、獣じゃなくって、コウモリだよ?」
「それでも嬉しいよ、ギィはギィだから……」
本当にリグってば優しい……。
「所でギィ、その姿でも空を飛べるの?」
「うん、飛べるよ?」
「いいなぁ〜……ぼくも空を飛んでみたいな〜……ギィがうらやましいよ」
あたしは考えた。今なら、リグを抱えて飛べるんじゃないかって。
「う〜ん、もしかして今だったら、リグを抱えて飛べるかもしれないよ?」
「え、ちょっとやってみて?」
「う、うん、いいけど……」
あたしはリグを後ろから抱えあげる。う、リグってば見た目よりも重い……。
「ん〜……」
「あ、いいよ、無理しなくっても……」
「大丈夫……」
ばさっ、ばさっ、ばさっ……。
ふわっ……。
ゆっくりと体が浮かぶ、そしてそのまま垂直上昇。
「うっわ〜……すっごい〜!気持ちいい〜!!」
リグってこう言う時は本当に子供っぽいよね。それもリグの素敵な所だけど。
それからしばらく、くるくると旋回した後、元の場所に着地。
「あーっ、楽しかった。ありがとうっ、ギィ」
「えへへ……」
リグは喜んでくれたけど、あたしはドキドキしっぱなしだったんだよね。
リグの甘酸っぱく、くらくらする香り、広い背中の温かさ……。くっついている私の胸のドキドキがリグにばれないかって、考えてた……。
んっ……。なんだか……体が熱い……。
「どうしたの?ギィ……」
「えっ?何でもないよ」
何でもないって言ったけど、ドキドキが早くなってる……。体中の熱がアソコに集まってきて、凄く……。
もしかしてあたし、発情してるの!?
「大丈夫?」
ぽんって、リグがあたしの肩を叩く。
「ひゃんっ!!だ、ダメ……今は……触らないで……」
「ギィ……?」
「や、ダメ、我慢できない……」
ほとんど無意識に自分の手をアソコに持っていく。一人エッチ、だっけ?これ……。
「ち、ちょっと、ギィ……」
「リグぅ……凄く熱いの……飲み込まれちゃうよぉ……助けてぇ……」
怖い、怖い、怖い……リグに嫌われるのが凄く怖い。
ふわっ……。
後ろからリグがあたしに抱きつく。
「リ、グぅ……やめて……あたし、あたし……」
その瞬間、あたしの唇に暖かいものが……。もしかして、キス!?
「気にしなくってもいいよ、辛いなら……寂しいならぼくが慰めてあげる……」
「でも……でも、リグには!」
「わかっているよ、でも、ぼくのために苦しんでいるギィをほってはおけない……」
リグ……リグぅ……優しすぎるよぉ……。
「ごめん……ごめんなさぁい……」
「謝らなくっていいよ、ぼくに任せて……」
あたしの服をはだけさせ、額、うなじ、胸、おへそにキスの雨……。女の獣ってこんな場所も感じるんだ……。
「ね、リグも……脱いで……」
「う、うん……」
リグがゆっくりと服を脱いでいく。しなやかな肉付き、ダークブルーのつやのある滑らかな毛皮。それらが満月の光で照らされてとても美しい……。
「これがリグのおちんちん……」
「う、まじまじと見ないでよぉ……」
リグの交尾している所は何度か見たことがあるけど、おちんちんをこんなに近くで見たのは初めて。
「たしか、こうだよね……」
ぱくっ。
おちんちんを口にくわえてゆっくりと舌で転がす。
「ぎ、ギィっ……」
ちょっと、しょっぱい味……。でも、嫌じゃない……。
「ひもひいい?」
気持ち良い?と、聞いたつもりだったが咥えたままでうまくしゃべれない。それでもリグは何を言ったかわかってくれて縦に頷いてくれた。
あたしは調子に乗って激しく舐めまわす。
「ギィっ、ぼくぅっ……」
びくん、びくん、びくん……。
おちんちんが突然暴れ出してあたしは口を離した。リグのおちんちんから沢山の赤ちゃんの元が飛び出し、あたしの黒い毛皮に白い星を描いていった。
あたしは星の一つを掬い取ると、自らの口に運んだ。
「うえぇ〜、苦い〜……」
「無理しなくってもいいよ」
う、リグに笑われた……。
「じゃ、そろそろいいかい?」
「う……リグは本当に……いいの?」
「うん、ギィなら、良いよ……」
「ありがと、それじゃ……」
あたしは木に手をついてお尻をリグの方に向けた。
「お願い……」
「うん……」
ぬち……アソコの入り口にリグのおちんちんが当たる。ゆっくりと、じらすように動き回るとあたしのアソコは燃えるように熱くなった。
「は、早くぅ……」
ぐちゅっ!
「あ、っくぅ……」
「大丈夫?痛くない?」
リグのが、あたしに入ってきた……。痛くないけど……おっきくってキツイ……。
「大丈夫……だよっ」
それを聞いてリグはあたしの中を往復しだした。ゆっくりと擦りあげられるたびに、あたしの熱は上がって行き、はじけそうになっていく……。
「リグ……あたし……あたし……ああああぁっ!!」
お尻から頭のてっぺんまで、毛皮を逆なでするような感じで気持ち良さがかけのぼっていく。
「はぁ、はぁ……気持ち良い……もっと、してぇ……」
もうあたしは何も考えられなかった。リグが与えてくれる快感……それにずっと身をゆだねていたかった……。
リグはあたしのおねだりに、何度も、何度も答えてくれた。
気持ちいい、気持ちいい……ずっとこのままでいたい……。
そう思いながら、私の意識は途切れてしまった……。

あたしは目が覚めた。まだ暗く、朝にはなっていない。隣でリグが気持ちよさそうに寝ている……。
あ、リグってばあたしに服、着せてくれたんだ……。
でもあたし、しちゃいけないことをしちゃった……。
やっぱり、ここにはいられない……。リグを起こさないように、ゆっくりと……。
ずべっ!
あたた……。またこけちゃった……。
「ギィ、どこに行くの?」
あぅ、また起こしちゃった……。
「リグ、ごめんね……あたしのせいで……だからあたし……行くね……」
どんな状況であれ、爆弾になりかねないあたしがリグのそばにいる資格なんて、無い……。
「待ってよ、ギィ!」
いつのまにかリグがあたしの後ろに来ている……。飛んで逃げればいいんだけど、できない……。まだ、未練があるみたい……。
「そんなこと、一人で背負い込まなくてもいい、ぼくは……ぼくもギィのことが好きなんだから!」
つつぅ……。
涙があふれてくる。優しいリグ。暖かいリグ。嬉しいよぉ……。
「ぎ、ギィ!?」
夜があける、陽がさしてくる。あたしの黒い毛皮がまわりの闇と一緒に溶けていく……。
そっか、あたし、消えちゃうんだ……。でも、それでいいのかも……。
「ありがと、嬉しかったよ……」
あたしの精一杯の笑顔。楽しかったよ、リグ……。
そして、あたしの視界から光が消えた……。でも、何だか暖かくって気持ち良い……。
「……ギィ……ギィ……」
リグの声が聞こえる……。あれ?あたし、消えたはずじゃ?
途端に何か浮き上がるような感覚に襲われ頭がグルグルと……な、なんなのぉ〜!!
すぽっ、ぼて……。
きゅぅ……。
「ギィ、ごめん、大丈夫!?」
「え?え??え???」
目の前にはリグの顔……でも、何か大きい?
「元に戻った、みたいだね……」
「えと……」
よく見ると、自分の姿が元のコウモリになっている……。そか、元に戻っただけなのか……。って事はあの暗闇は服の中だった……のかな?
「いいの?あたしが一緒に行っても……」
「もちろんだよ、ギィもいつまでもそばにいて欲しい……」
リグがあたしをぎゅっ、って抱きしめる……。ありがとう、リグ……。あたしは……リグと一緒にいるよ……いつまでも……。




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