「このぉ!!」
びゅっ!!
スリングから小石が発射される。
カツーン……。
しかし、小石が壁に跳ね返る音が遺跡に響くだけだった……。
びゅん!!
黒い塊がぼくの首筋めがけて飛びかかってくる。ぼくは間一髪それをかわすと小石を拾い、黒い塊に狙いを定める。
びゅっ!!
しかし黒い塊にはあたらない。
黒い塊……肉食こうもり……通常10体から多いときだと100体以上の群れでほかの生き物を襲い骨だけにする生物……。
家族と言う概念は持っておらず、そのときそのときで別の仲間と群れを作り行動する……。
こいつはこの遺跡の奥を住処にしていたのだろう。突然の侵入者に驚き、襲いかかってきたのだ。
ひゅん!!
こうもりの牙がぼくの左腕をかすめた。袖が破れ、うっすらと血がにじむ。
「くそぉ!!」
びゅっ!!バシィッ!!
破れかぶれで放った小石が翼に命中し、こうもりは力なく墜落した。
「ととっ、動くな、暴れるなっ!」
ぼくは床でじたばたする肉食こうもりを捕まえ、傷口に水をかけてやった。
「おまえには悪いことしたな。ぼくがおまえのすみかに踏み込んだせいで驚かせちゃって……」
「ぎぎぃ?」
「こんなことしかできないけど、元気でな……」
ぼくがこうもりを床に下ろしてやると一度ぴょんと跳ねた後、遺跡の出口のほうに飛んでいった。
「いま、ぼくにお礼を言ったのかな?……気のせいだよな……」
ぼくは気を取り直して立ちあがろうとするが力が入らない。
「そう……だった……肉食こうもりは……牙に毒を持っているんだった……」
肉食こうもりの毒は筋肉に作用する。傷口から進入した毒は血液とともに体中に回り、すべての筋肉を弛緩させる。効果はほおっておけば一日で切れるが特効薬や血清は見つかってはいない。
「はは……こんなところで一日足止めか……。いや、今何かあったら命も危ないな……。食料も無いのに……」
ばさばさばさ……。
出口のほうから翼の音が聞こえる。
「肉食こうもり!?まずい!!」
しかし、飛んできたこうもりは口に何かをくわえた翼を怪我したこうもりだった。
「おまえ?なに?キノコ?これを食べろって?」
「ぎぎぃ……」
こうもりは首を横に振った。
「え?傷口に?こすり付けろ?」
「ぎぎぃ!」
こうもりはぴょンぴょんと飛び跳ねている。
「え?うん、わかったよ……」
ぼくはこうもりがそう言っているような気がしてキノコを傷口にこすりつけた。すると体の力が徐々に戻っていった。
「え?え?うそ?なんで?ありがとー!!」
ぼくは思わずこうもりを抱きしめた。
「ぎぃ、ぎぎぃ、ぎぃぎぃ、ぎぎぎぃ!!」
「え?なに?苦しいの?」
「ぎぃ!!」
「もしかしておまえ、獣の言葉がわかるのか?かしこいなー……」
「ぎぃぃ……」
こうもりは体を後ろに向けてもじもじしている。どうやら照れているようだ。

「え?ギィ、こっちなの?」
ぼくはこうもりに案内され、遺跡の奥へ向かった。ギィは―ぼくが名前をつけたんだけど―この遺跡全体を住処にしているらしい。
「ぎぃ、ぎぎぃ」
「へー、ここが最深部か……しかし、見事なまでに何も無いな……」
何も無いことは予測していた。アグ=ラグの時代から100年以上経っているわけだし……。しかし、取り残しとかそういうもの以上に何も無い。がらんどうである。
「しかたがない、か……あれ?」
何も無いはずだった部屋に扉が出現していた。いや、見落としていたのかもしれないが……。
「ぎぃ、ぎぎぃ……」
「え?こんな物知らないって?」
あれだけ遺跡に詳しいギィが知らない。確かに目立つとは言わないがわからないとも言いにくい。ここから先は誰も入ったことのない未知の場所なのかもしれない……。
「ギィは……ここに残っていてくれないか……そして……ぼくが帰ってこなかったらこの中には入らないでどこかに行ったほうがいい……」
「ぎぃ……」
「そう心配するなって、きっと戻ってくるよ」
そして、ぼくは扉を開けた。

長い……長い廊下……。ぼくの足音だけが響いてくる……。単調な道……。しかし注意は怠らない……。こんなところにも何かがしかけてあるかもしれないから……。
しかしそれは杞憂に終わる。いきなり視界がひらけ、広間に出た。四方の壁と天井からは淡い光が出ていて、明るかった。
「誰か……いる?」
部屋の中心部に泉が涌いていてその中央に女の獣が立っていた。泉の中央、それも泉の上に立っている疑問などぼくの頭には出てこず、ふらふらと女の獣に近づいて行った。
「ふふ……この部屋に来客なんて何十年ぶりだろうね……。わらわの名はルカ……。ようこそ、小さな来訪者さん」
ルカはふわっと宙を飛び、音も無くぼくの目の前に降り立った。でも、宙を飛んだという疑問など頭の中には入ってこず、ルカの青い瞳だけを見つめていた。
「ぼくの……名前は……リグ……リグ=ラグ……」
頭に入ってきた事は、ルカが美獣で、グラマーな大人の獣だってことだけ……怪しいなんてことはちらりとも頭をかすめなかった。
「ふふ……リグ……ね……」
ルカが服するすると脱いでいく……。ぼくは瞬きすらできず、ルカの行動を見つめている……。そして、すべてを脱ぎ終わり、ルカの美しい銀色の毛皮がぼくの前にさらされた……。
「さあ、来て……。やる事は……わかっているわね……」
ぼくはこくんとうなずくと、ふらふらとルカの方に歩いていき、豊満な胸にむしゃぶりついた。
「あ、あんんぅ!!」
ぼくはもうほとんど無意識に乳首を軽く噛んだり、舌で転がしたりしながら、もう一方の胸を強く揉みしだいた。
「ふふ……上手ね……今度はこっちも……」
ぼくは言われた通り、ルカの花弁を丹念に舐めた。甘酸っぱい、雌の味が口いっぱいに広がっていく……。そして毛皮をかき分け、見つけた突起に軽く牙をかけた。
「ひゃうんっ!!……本当に上手ね……。さぁ、今度は君のをここに……」
ルカはあおむけにコロンと床に寝ると、両手で自分の花弁を開いて見せた。
ぼくはそそくさとズボンを脱ぐと一気にルカの花弁にカチカチになったぼくのおちんちんを突き刺した。
「ふふ、どう?わらわの膣は気持ちいい?」
「は、はひぃ……気持ちいぃですぅ……おちんちん、溶けちゃいそぉー……」
ぼくは自分の欲望を満たすためだけに激しく自分の腰を動かした。パンパンと肉と肉のぶつかり合う音がフロア中に反響した。
「もっと、もっと激しくぅ!!」
「でも、でもぼくもぅ……ああっ!!」
びくっ、びくっ……びゅくびゅくびゅく……。
ぼくはルカの中に熱い物をたっぷりと注ぎ込んだ。しかし、ぼくのおちんちんは衰えを知らないかのように固さをたもったままだった。
「もぅ……でも、もう一回、できるわね……」
「ひぃっ!!」
ぼくのお尻に何か異物が侵入してきた。ルカの尻尾だ。
「どう?犯されながら犯す感覚は?」
「ひぃい……いた……のに、きも……いい……よ……」
「どうしたの?はっきりしゃべりなさい」
ルカの尻尾がぼくのお尻の中でグネグネと動く。そのたびにぼくの腰は動き、痛みと快感で頭が真っ白になっていった。
「よす……て……しゃべっ、れっ……なひのぉ〜」
「あらあら、じゃあ、こんな事したら……」
ルカがぼくの尻尾を強く握る。
「ひいいっ!!」
あまりの快感にぼくの目は焦点が合わず、口はだらしなく開き、よだれがたらたらと流れていった。
「じゃあ、これ……はっ!!」
ルカがぼくの乳首を強くつねる。
「ひぎゃああぁっ!!」
びくんびくん、びゅく……びゅく……。
体が痙攣し、ルカの花弁からぼくのおちんちんが抜けた。ぼくから放たれた白濁とした液体がルカの美しい銀色の毛並みを汚した。
と、同時に意識が途絶え、ぼくの体はルカのほうに倒れていった。

がばっ。
ぼくは一気に体を起こした。
「気がついたか?」
ルカが心配そうにぼくを見つめている。やさしい目だ。
「え……と……あ!!」
ぼくはさっきの出来事を思いだし、ぼんっ、っと言う音でも出そうな勢いで顔が赤くなっていった。
「すまぬ……。わらわは古き森の女神、ルカ=ルサ……。何百年も経つうちにこの神殿に獣はよりつかなくなり、ここ30年ほどは誰一獣としてこの神殿に足を踏み入れる者はいなかったのだ……」
「女神……様?」
さっきとはルカの口調も雰囲気もまったく違っている。
「左様、さらに言えばこの部屋に入って来れた者はかれこれ百年ほどはおらぬ……。心やさしき者以外はその扉をかたくなに閉ざすからな……」
ルカはすっとうつむいた。今までずっと一獣で淋しかったのだろう。
「とはいえ、いくらなんでもあれはやりすぎた……。チャーム・アイまで使ってな……。何でも望みを言ってくれ。わらわがかなえてやる」
「え、そんな……別にいいですよ……」
「それではわらわの気がすまんのだ」
ぼくは考えた。宝石もいい。黄金もいい。でもそんな物は自分で手に入れなくちゃ面白くない。
「携帯食料をください……。盗まれちゃって……」
「?そんな物でいいのか?もっとこう、宝石でも財宝でも……」
「いいんです、それは自分の力で手にいれますから……」
と、その時ぼくの入ってきたほうから翼の音が聞こえた。
「ギィ!外で待ってろって言ったのに……」
「ぎぃ……」
ギィはすまなそうに小さな声で鳴いた。
「ふうん、そういう事……。いいでしょう。そちらのお嬢さんの願いもかなえてあげる」
「ぎぃ、ぎいぃ!」
ルカがギィに手をかざし、何かを唱えると淡い光がギィを包み込んだ。
「これでいい……試してみるがいい」
ギィがパタパタとぼくの目の前に飛んできてホバリングをした。
「リグぅ、あたしの言葉、わかるぅ?」
「え、ギィ、しゃべれ……」
「きゃははっ、ルカ様にリグとしゃべれるようにしてもらったんだ。あたし、リグについていく。いいでしょ?」
「い、いいけど……」
「決まりっ!よろしくねっ、リグっ!!」
ギィが嬉しそうにぼくの回りをくるくると飛ぶ。
「さて、お主は携帯食料だったな……三年分もあればよいか?」
「そ、そんなにいりません、一週間分くらいあればいいんです」
するとルカは困ったような顔をした。
「お主は本当に欲が無いのだな……」
ルカがふぅと息を吹きかけるとそこには一週間分よりも少々多い携帯食料が現れていた。
「だが、これだけではわらわの気がすまんからな、これもやろう」
ルカは今度は指を鳴らした。するとルカの手の中に白い宝石のついた指輪が現れていた。
「それ……は……?」
「幸運の指輪……それほど強い力はないが身につけた者を危険から守ってくれる効力がある。売っても何してもいい……。これも受け取ってもらえんと、今度はわらわが困るのだ……」
ぼくはしばらく考えると、ルカに手を差し出した。
「わかりました。ありがたくいただきます」
「では、わらわが外まで送ろう……またいつか来てくれると嬉しいのだが、な……」
「また、必ず来ます……」
「きゃははっ、あたしもまた来るからね、ルカ様っ」
そして、ぼく達の体が淡い光に包まれたかと思うと弾き飛ばされるような感覚に襲われた……。




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